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何十年ぶりって?

執筆者の写真: 森徳堂森徳堂

更新日:2019年12月4日

新元号が決まった日に昭和の友人に何十年かぶりに再会した。平成のはじめに一度会っているから30年ぶりではないが、少なくとも20年ぶりではある。


こう書くとよくわかる。不思議なことに、20年ぶりも30年ぶりもたいした違いはない。「何十年かぶりの再会」という表現で読む人には「長年、会っていなかった」という肝心のポイントは充分、伝わる。「何十年って20年から99年まで幅広いけど、正確には何年ぶりなの」と問いただされたことはないし、自分も訊いたことがない。


何十年=20~40年というイメージではないだろうか。10年ぶりならそう言うだろうし、50年ぶりもそう言う。60年ぶり以上の話をしないのは、たいてい相手が死んでいるからだろう。記憶に残るのは幼稚園以降だとすれば、自分が65歳、相手もそれ以上の年齢だ。どちらかが死んでいる可能性は高い。


しかし、これからは違う。すでに日本の人口のうち7万人が百歳以上であり、今後も増え続ける。1963年にわずか153人だったことを考えるといかに増えたかがよくわかる。しかも、上昇のカーブは急だ。もうひとつ言えば頭も体もしっかりした65歳以上が増えている。


百歳を迎えた昭和世代が「何十年かぶりの再会だった」と話すとき、「それ実際は何年ぶり?」と令和生まれに聞き返されることだろう。


久しぶりに会った友人は正真正銘のジジイだった。そのうえ長年の持病で腎臓は片方しかない(それも移植)。脳溢血の後遺症でものが見える感覚が変だという。しかし、外見ではわからない。見た目は普通でも中身は本気でボロボロのジジイなのだ。


ただし、昔と変わらないやせ型、長身のすらっとしたスタイルに、昔と変わらぬジーパン、ジャンパー姿。はげかかった頭は迷彩柄のバンダナでうまいことごまかしていた。カッコよさを決して捨てないロック世代の心意気だ。


駅中の喫茶店に入るなり、注文も忘れてしばらく話し込んだ。さすが元輸入レコードの通販業者だっただけに、いまだに海外ミュージシャンのことは詳しい。昔は自宅倉庫に2万枚もの在庫があったというから、初耳の驚きだった。


なんだかんだと話が飛んで、話が盛り上がると大声にもなった。きっと我々は迷惑な客だったに違いない。だが、店員は注文を聞きに来ることもなく長い間、ほっておいてくれた。感謝せずにはいられない。


平成生まれの若者に「昭和世代」と呼ばれ、旧人類扱いされてきた。令和世代からは化石扱いされるだろう。時間は止められない。世代は交代していく。








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